にのだん社会保険労務士事務所

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にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和7年7月号(No.68)

【①熱中症あなどるなかれ】

 転職した営業会社で経験した出来事ですが、当時会社やお店を相手に求人広告の営業活動を行っていました。ちょうど今と同じように気温が急激に上がった日の昼のことでした。公園付近に車を止めて休憩をとっていましたが、日頃からコスト意識を会社から求められていたせいか、はじめは停車場所が陰になっていたので、窓を開けてエンジンを切り、食事のあと昼寝をしました。

 その日は寝不足のせいか営業社員の特権か1時間近く睡眠をとったのですが、起きた時は車の正面から強い太陽の日差しが降り注ぎ、目を開けてとにかく感じたのが体の熱さと同時に酷い頭痛の症状がでました。感覚的に「これはちょっとやばいな」と感じ、慌てて車のエンジンをかけて冷房を強くし、自動販売機で冷たい飲み物を購入しました。

 しばらくすると体の熱さやだるさは軽減しましたが、頭痛はしばらく続きました。タラレバですが、そのまま自力で対応出来なかった場合は、車の中でそのまま意識を失い重症になる恐れもあったかもしれません。

 令和7年6月1日から改正労働安全衛生規則の施行にともない、職場における熱中症対策の強化として「熱中症対策の体制整備」「熱中症対策の手順作成」「熱中症対策に関する関係者への周知」が事業者に義務付けられました。

 対象となるのは「WBGT(熱中症を予防するために用いられる指標)28度以上または気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業となっていますが、仕事を始める際の体調面、昨日はよく睡眠をとったか?朝しっかり食事をしたか?なども熱中症に大きく影響する可能性が考えられます。

 熱中症が疑われる従業員さんが発生した際の現場責任者への速やかな報告、的確な初期対応や医療機関への搬送など、いざという時をイメージしながら熱中症対策マニュアルをこの機会に作成する必要があると感じます。

【②年金制度改革法案について】

 6月、年金制度改革の関連法が参議院本会議において可決・成立しました。年金制度は我々国民にとって大きな関心事であり、今後のライフプランにも大きく影響する重要な話になります。経営者さんのみならず従業員さんも関心が高いと思いますので、主な法改正のポイントを以下のとおり取り上げたいと思います。

社会保険の適用拡大等
①事業所規模により、短時間でも社会保険に加入しなければならない人(いわゆる社会保険短時間労働者)の加入条件であった月額88,000円以上ルールの撤廃 ※令和8年4月1日施行
②社会保険短時間労働者に関する企業規模要件の撤廃(現時点では51人以上の 企業が適用対象であるが、今後10年間かけて段階的に撤廃) ※36人以上に変更されるのが令和9年10月 ※完全撤廃が令和17年10月
【ポイント】多くの短時間労働者が、自身で社会保険に加入出来るメリットがあるが、本人事業主両方の保険料負担が増えるデメリットの影響も大きい
2 在職老齢年金制度の見直し
令和7年度の在職老齢年金の調整される基準(基本月額と総報酬月額相当額の合計額)51万円から62万円に引上げ ※令和8年4月1日施行 
【ポイント】今以上に老齢厚生年金を受給しながら、しっかりと働くことが可能(老齢厚生年金停止のリスクが軽減される)
3 遺族年金の見直し
遺族厚生年金について60歳未満の男性を新たに支給対象とする、5年の有期給付の対象者拡大(受給可能期間の短縮)や死亡分割制度等の新設による受給額の減額  その他、遺族基礎年金支給要件の改正 ※令和10年4月1日施行
4 厚生年金標準報酬月額上限
標準報酬月額の上限を現状の65万円から75万円に3年間かけて段階的に引上げ  68万円引き上げは令和9年9月1日 ※75万円引上げは令和11年9月1日
5 将来の基礎年金の給付水準の底上げ
将来的に基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合、厚生年金の積立金を活用して底上げ措置を講じるかどうか、令和11年の公的年金財政検証を踏まえて判断

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