にのだん社会保険労務士事務所は
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にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和8年5月号(No.78)
【①タダより怖いものはない】
若い頃、仕事でお世話になった方より「タダより怖いものはない」ということばを教わりましたが、3月それを思い出す出来事がありました。
義理の母が、野菜を販売する産直店の企画した「京都無料バスツアー」に当選し、場所も季節も良かったため、嫁さんと娘もツアーに誘い3人で参加することになりました。※ただし2人はオプション参加であったため有料
それで当日の朝、集合場所まで送り、夜になって帰ってきたあと「どうだった」「楽しかった」と聞くと「いやあ、もう大変だったよ」とかなり疲れた様子でした。詳細を聞いて驚いたのが、本来の目的地であり大変楽しみにしていた観光地の滞在は短時間で終了し、時間を費やした訪問場所はジュエリーを販売する店舗とのことでした。
店舗ではジュエリーに関して、遠赤外線の効果で体に良い商品であること、また一般では販売していない特別な商品であることなど、まるで通販番組のような話術のあと、買う意思がないことを伝えても「とりあえずネックレスを首にかけて」と試着を促され、周りを多くのスタッフに囲まれながら延々と商品説明を聞かされたとのことでした。そしてジュエリーの販売価格が●十万円もする高額商品であったことも驚きました。
そのような商品を前から探していた人で、自分の意思で購入するのであれば全く問題はないかもしれません。しかし、本人の意思に反して強引に、かつ長時間に渡り本人が否定してもしつこく高額な商品の購入を促した結果、「買わなければならない」心理に追い込むのは悪質な「催眠商法」と言わざるを得ません。
食事を無料で提供しているとはいえ、高額ジュエリーの販売会社と組んで無料のバスツアーを企画するお店の常識も疑いたくなります。国民生活センターからも注意情報が公表されているようですので、タダより怖いものはない意識を常に持つことが大事です。
【②スキマバイト利用のリスク】
先月、短時間や単発で働く「スポットワーク」(いわゆるスキマバイト)の利用者が契約を就業直前に破棄されたのは違法であると、仲介アプリの運営会社に対し、未払い賃金を訴えたニュースが取り上げられました。
労働者、雇用者双方が手軽に利用できることから市場が急拡大していた「スキマバイト」ですが、雇用者側の都合による直前のキャンセルが相次いだことから、厚生労働省は昨年7月、求職者が応募した仕事に関して「マッチングした時点で労働契約が成立する」との見解を公表したことに関連した訴えであると推測されます。
確かに、少しでも余裕がある僅かな時間に働くことが出来て、かつ報酬を得ることが出来るスキマバイトは働く側にとって魅力的なシステムであり、人手不足の中短期間、短時間でも業務をこなす人材があればぜひとも活用したい雇用主にとっても当然メリットがあるシステムかもしれません。しかし、あくまで文章であろうと口頭であろうと約束が交わされた時点で雇用契約は成立しているため、雇用主が一方的に約束された勤務を安易な理由で、労働者の同意を得ずキャンセルすることに問題があるのは必然であると感じます。
また、単発的な人材活用が昔の日雇い派遣のような感覚になることで、雇用主が労働基準法で定められる「労働条件通知書」の交付をしない、安全かつ健康に働くことの出来る環境を確保する安全衛生管理を行わない、スキマバイトであっても労災が適用される労働者であるという認識が希薄しているリスクも考えられます。
しかし、スキマバイトの問題は雇用主のみが悪いのではなく、労働者にも問題があるかもしれません。当日約束の時間になっても労働者が現れずドタキャンされるリスクがあるからです。
私がかつて経験した派遣事業でも同じ事例は多々発生しました。もともと手軽な感覚で仕事が出来るスキマバイトは、全ての方ではないですが働く側の覚悟や責任感が薄いことも原因かもしれません。さらに、雇用主が求めるスキルを労働者が全く持ち備えていない場合などミスマッチのリスクも当然考えられます。
スキマバイトは人手不足を補う手段としてお互いがウィンウィンになるべき契約です。運営会社が間に入ることで手軽に利用出来るシステムが成り立つのかもしれません。しかし、雇用主が直接求人募集を出し、労働者が直接応募するのが本来の姿です。スキマバイトの活用でトラブルが発生しないよう、事前にメリットとデメリットを理解することが何より重要であると感じます。
~最後までお読み頂きありがとうございました~